多くの人が関わる映画制作では、扱う題材の範囲が狭くなる。例えば沖縄の「基地建設反対運動」をドキュメンタリーで撮ろうとすると、あらゆるスタッフが内偵の対象になるかもしれない。
周防監督には、「それでもボクはやってない」という刑事司法の問題点を描いた作品があり、2011年~2014年まで、法務省「法制審議会」特別部会の委員として、刑事司法の改革に携わった。
「今回の法案は、取り調べの録音録画を検討することを付則に盛り込み衆議院を通過したが、ほとんど期待はできない。
2年以内に法制化される取り調べ全過程の録音録画というのは、『逮捕された』被疑者の録音録画。
『任意で』取り調べて自白を取って、そのあと逮捕。
そこから取り調べを録音録画すると、かえって捜査機関の違法な取り調べを(逮捕以降の録音録画によって)アリバイ作りを正当化できる。かえって怖い事が起こることも考えられる。
法務省の審議会では、通信傍受も議題になり、捜査関係者からは『室内に盗聴器を設置する会話傍受も導入したい』とする強い要望が出た。」という。
捜査手段を広げたいという思惑か?
「武器はたくさん持った方がいいと。自分たちが捜査したいもの、しやすいやり方で、と考えるのは当然だと思う。
捜査機関は、楽に立件したい。あらゆる手段を使って取り調べをしたい。」
政府は『テロ等準備罪』を通信傍受の対象にしないとしているが、周防氏は懐疑的だ。
「僕が法制審議会で本当に強く感じたのは、法律っていうのは、『解釈と運用で、どうにでもなってしまうんだ』ということ。
共謀罪が、今、政府が『一般の人は対象にならない』とか、『通信傍受が、このために拡大されることはない』と言っているが、それは絶対、あてにならない。という事は、これは会議を通じて実感したことなので、『ないです』という事は、絶対ない。
絶対に『通信傍受』、『会話傍受』など、作られます、と、逆に自信を持って言える」
周防監督は「共謀罪」について、
「そもそも、政府が言うように、条約締結・テロ対策に不可欠なものなのか?今こそ、その原点に立ち返って考えてみることが必要。
『共謀罪ありき』で、その運用について話す以前に、今、すでに、国内にテロ対策の法律が整備されているので、その法律で何が足りていないのか、そこを議論する方が建設的だし、よほどテロ対策になるのではないか」と話されていた、との事。
説得力のある内容の発言だった。
そして「蓮舫さんも、少し前に、同じことを話されていたな」と思い出した。
建設的な話し合いを、期待している。