電通の新入社員で2015年12月に過労自殺で亡くなられた、高橋まつりさんのこと

このニュースについて見るたび・聞くたびに、「書こう」と思うが書けなかった。

涙が出るから。

私の体調が悪かったころ、息子の仕事が忙しくなり、メールをすると「忙しくて、きょうもテッペン超える」(日付が変わるまで残業という意味)とか「(夜中まで残業で)朝、ちゃんと起きて出社できるかどうかわからないから、会社に泊まる」という返事が返ってきた。

心配したが、男だし、私が何かできるわけもなく、「とにかく、体調を崩さないように体調管理をしっかりして、あまり無理しないように」と言う事しかできなかった。

すぐに次の仕事を見つける事は難しいと思うし、なにより「最低3年は勤めないと」という思いが私にも息子にもあったからだ。

 

結局息子は、入社して3年過ぎたころ、「会社を辞めた。」と突然話し、その後、自分でいろいろ考え、今は別の会社で働いている。

 

だから、まつりさんのことを知った時、まつりさんもきっと「入社した以上、3年間はなんとしても頑張る」という思いだったのではないか、と思った。

考えてみれば、私に愚痴のようなことを一切メールしてこなかった息子が、体調の悪い私に「心配させるようなことをメールしてきた」事にその時初めて気づき、「母親なのに自分の事でいっぱいいっぱいだったから、もしかしたら、うちの子も、まつりさんのように大変だったのでは‥」と愕然とした。

 

まつりさんは、入社半年後から仕事量が急に多くなったようだが、入社半年で急に仕事量が増えたとしても、それを、配慮して部下を気遣ってやるのが上司の役目だ。

上司は部下を指導する義務がある。

まつりさんは会社の寮で生活していたという事だから、きっと寮に帰っても、仕事のことが頭から離れなかったのではないかと思う。

電通という大きな会社なら、当然上司は「部下に対しての配慮」(うつ病などの対策)の講習などを受けていると思う。これだけ「パワハラや仕事で、うつ病になる人が増えている」んだから、「部下が今どういう状態か、どこまで仕事ができているのか、誰か補助に入った方がいいのか」などを、特に新入社員なら気をつけて指導するのが役目だと思う。

 

私が報道を見て「何を言っているんだ、この上司は!」と怒ったのは、まつりさんが、髪がボサボサで化粧もはげて疲れ切った状態で出社した時、上司が「なんだその髪は!化粧もはげて。きちんとしてから出社しろ」というような事を話したとされることだ!

入社して1年もたっていない若い社員が、髪や化粧をきちんとしないはずがない!

疲れ果てて、もう、髪も顔も、触ることすらできなかったんだと思う。

時間が来たから、とにかく「出社しなくては」と思って出社したのではないか?

上司は、その表情に何も感じなかったのか?

その時に、一言「なんか疲れているようだな。そんな状態では仕事は無理だな。今日は医者に行って休め」とか「なにか仕事で困っているんじゃないか?期日までにできるか?途中報告をするようにな」など、気遣う言葉を、なぜ、言わなかったのか?

 

【真面目で努力家でデキル人は我慢強く、とにかく頑張る。

今までそうやって頑張って結果を出してきたから、これからだって大丈夫。自分の睡眠時間も食事の時間も削ればできる。今までだって、それでやってきたし、結果を出してきたんだから。】

 と考えるが、いくらデキル人だって、それが毎日毎日ずっと続けば、いずれ体調がおかしくなる。

本人は、とにかく頑張ってしまい、ふらふらになっても「仕事」が頭にあって「病気」だと気づかない。だから時間が来ると「会社に行かなくちゃ」と体が動く。

周りの人は本当に「全然気づかなかった」のか?

「口数が少なくなった」とか、「見るからにだるそうだった」とか、「だんだん瘦せてきた」とか。

隣の人と全然会話もしないほど、忙しい職場だったのか?

 

周りの人が気付いて上司に伝えるとか、メンタル面で社員を支える仕組みを作らないと、またこういう事は起きるのではないか?

だから上司は、部下の様子や仕事量を、チェックしてほしいと思う。新人には特に!

今後、同じような事が起きないように、残業時間についてはもっと「各企業独自」で短い時間で決めてほしいと思う。

「必ず週1日は休め」とか、インターバル(退社から次の出社まで10時間以上開けるなど)の働き方をするとか、とにかく、過労で「寝ている間に突然死ぬ」とか「自殺」という悲しい事がこれ以上起きないように会社として考え、改善していただきたいと思う。

 

そもそも政府が、「大企業優先」で考えるから、それをまず、改めてほしい!!!

期間工とか派遣という働き方は、人を「使い捨て」している。

それでは一生懸命働いていても、収入の面で先の見通しが立たないため、いつも「不安」を抱えて生きることになり、結婚なんてとてもできない。

少子高齢化社会が来るんだから、一人一人が「正社員として働けて、先の収入をある程度見込め、生活が成り立つ」と思える社会になれば、結婚する人も増え、出生率も上がるのではないか?

 

私が入社したころ(40年以上前)、上司には「給料分は、しっかり働け」「風邪を引いた?社会人としてたるんどる。早く医者へ行って治せ。今後は節制しろ」「仕事でマズイ事が起きたらすぐに報告しろ。対処が遅れたら後が大変だからな」などと言われた。

思えば、入社して初めて自分の保険証を持って医者に行ったら1割負担で「働く人は守られている」と思ったし、多くの社員は午後8時くらいで退社し、時々居酒屋で同僚と話す機会もあったから、悩みなども聞いてもらえた。

仕事が「バッチリ」早くできる人も、時間がかかったりする人もいて、まぁ、いろいろ、「なんで同僚の仕事までやらなきゃいけないんだ」とブツブツ言ったりする人もいて大変なこともあったが、「年功序列」(賛否両論あるが)、「正社員」ということで(期間限定で午後11時頃まで残業したこともあったが)、あの時代は「安心」があったと思う。

結婚しても、やりくりして貯金をすれば夫の給料で何とか生活できたし、介護も家でできた。

 

今は、夫が派遣社員だと生活できないから夫婦で働く必要があり(もちろん、全てがそうではないが)、女性の社会進出もあり、仕事と育児で、夫婦ともども大変だと思う。

保育所が足りないというが、それは、私たちの世代は「夫は仕事、妻は家事・育児・介護」で、「保育所よりも幼稚園に2年とか3年通園」させたから、急に保育所を増やすことは大変だと思う。

子供が急病になった時に預ける施設も必要だと思うが、なかなか難しい。

今の状況を見ると、いろんなところで「もっと働く人に優しい社会」を作らないといけないと思う。

 

きょうの新聞記事で、再びまつりさんの微笑む写真を見て、また涙した。

 

一生懸命生き抜いたまつりさんのご冥福を、心からお祈りします。

そして、お母様のご健康をお祈りします。